時事旬報社

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物損事故(物件事故)と警察の民事不介入

 社会には実際経験してみないと常識では想像もできないような苦難に出会うことがある。東京郊外に住むAさんが体験した交通事故(物損事故)もそんな話の一つだ。

 

当日

  いつものように近所のスーパーにマイカーで出かけたAさん、帰り道で十字路に差し掛かった。信号はない交差点である。道幅は狭く対向車とすれ違うのがやっとで、緩やかな登り起伏もあるため、侵入すると視界が悪く、日頃から通過には細心の注意を払っていた交差点だ。

 

 見ると右方向よりウィンカーを点滅させコチラに左折しようとする対向車がある。そこでAさんは一時停止標識前の停止線に車を止め、対向車の通過を待った。対向車は微速前進で左折を開始したが、大きく膨らみ、このままでは正面衝突する状況である。咄嗟にAさんはクラクションに手をかけたが、同時に対向車はブレーキをかけ停止する趣きである。「コチラに気がつき停止してバックするのか」と思った瞬間、対向車は再び前進、A車の右側面に衝突した。衝突といっても時速数キロ程度、怪我人が出るほどではない。それでもA車の右ウィンカーは破損し、バンパーが歪んだ。

 

 対向車には中年女性二人が乗車し、ハンドルを握っていたB女さんは、仰天した風で車から駆け寄り、「前を見ていなかったのでぶつかってしまった」と詫びた。「事故ですから警察に連絡します」とAさんは告げ、110番通報した。
 小さな事故であると警察が判断したからか、近隣の派出所から原付に乗った警察官一人が到着するまで30分程かかった。その間、道路の往来を堰き止めるわけにもゆかず、自走に問題のないA車、B女車共に交差点から数十メートル離れた路肩に車を移動し、警察を待った。

 

 現場にやってきた警察官は、第一に負傷者がいないことを確認し、双方から事故時の状況を聴取した。B女さんの動揺は収まらず、「前を見ずに衝突した」、「A車の修理代は自分が払う」と話し、Aさんもその話の通りだ、と同意した。その後、警察官は衝突現場に行き、一時停止線上に散乱するB車のウィンカー破片やA車、B女車の破損状況を持参したデジタルカメラに収め、両者の運転免許証や自賠責保険などの必要箇所を書き写し、名前、勤務する派出所を告げ、現場を去った。

 Aさん、B女さんも相互に名前、連絡先、任意保険の会社名、証券番号を確認し、別れた。「相手は非を認めていることだし、コチラは停止していたのだから、相手方に全ての責任はある」と、Aさんは何の疑問ももたなかった。ただ別れ際にB女さんがAさんに告げた一言「気をつけて帰ってください、、、」が少々気になった。当然、「気をつけるのは、ソッチだろう」だからだ。

 

 Aさんの苦悩はこの時より始まる。約1年に渡り続く苦悩である。後日、Aさんを大いに後悔させたことが二つあった。一つはA車がドライブレコーダーを装着していなかったことだ。そしてもう一つは、車を移動させる前に、現場で衝突状況をスマホカメラで撮影しておかなかったことだ。

 

翌日~数日後

  事故翌日、B女さんの保険会社から電話がある。修理工場や代車の手配など補償の話と思いきや、「B女さんは、交差点を突進してきたA車にぶつけられた」と主張していると知り言葉を失う。「賠償は過失割合の問題となる。事故交差点は、A車レーンに一時停止線があることから、進入優先権はB女車にあり、過失割合はA車80%、B車20%の料率と算定するが、その条件で了承するか」というものだった。
 Aさんは狼狽する。そもそも事実に反するし、B女さんも警察にその事実を認めていると反論しても、「反論する事実をどうやって実証できるのか」、「警察の証言や資料は証拠となるが、その立証責任は反論者側となる」と取り付く島もない。

 

 「到底了承できない」と電話を切り、Aさんの保険会社に連絡、相談すると「保険会社の担当者同士で交渉してみる」との話となる。数日後、結果の連絡があるが、「交渉により80:20の料率を70:30、つまりAさんの過失責任を10%押さえることができた」と実績を自慢するかのような話方。事故の過失は7割はAさんにある、保険会社としての交渉はこれが限度で、「責任を認めるほかない」と自分の保険会社から説得される事態にAさんは頭を抱える。

 

 後日、判明したことであるが、損保会社には力関係が存在する。B女さん加入の損保は国内大手の民族系保険会社で、Aさんは、通販型の格安損保であった。格安損保は、人員や調査体制が限られ、よほど大きな事故でない限り(つまり数十万程度の賠償案件については)、人件費を節約するため(事故内容はどうであれ)さっさと賠償金を払って一件落着させる傾向にある。逆にその手の内が分っている大手損保は、「さっさと損保」には強気に出る、というのである。

 

 過失を認めるよう諭されたAさんであるが、納得ゆかない。A車が停止していたのが事実で、相手方に再交渉を依頼するが、ここでまた思いもよらない損保のルールを知る。「保険会社同士の交渉は料率交渉のみが許されており、ゼロ対100、つまりAさんが無過失を主張する場合は対応ができない」と言うのだ。なぜこのような「定め」になっているのかについては、Aさんの知るところではない。いずれにしてもAさんは単独でB女さん損保と渡り合う他ない状況となる。

 

民事不介入の原則

 方策がなくなったAさんは、現場検証に着た派出所警察官に連絡した。現場で「B女さんが話したこと」、「一時停止線上にA車のウィンカー部品が散乱していた」などの事実をB女さん保険会社に話してもらいたいと思ったのだ。ここでまたAさんは、これまで無縁であった法律の「定め」を知り呆然とする。

 

  「警察には民事不介入の原則があり、私人間の財産的な紛争については、司法権(裁判所)の管轄となり警察権は介入できないことになっている。したがって、B女さん保険会社が連絡してきても、自分の判断で、何を見た、どう考えたか、は話すことができない」。
 どうも警察官は、同様な事例を何度も経験しているようで、Aさんの依頼に至極こなれた対応である。「何のために警察は現場検証をするのだ」、Aさんは苛立つが、負傷者がでる事故(人身事故)は刑事事件となり警察権の本務として事故原因を究明し、事実を認定するが、私人間の物損事故(物件事故)の場合は、民事事件であり警察は介入しないのが原則である。

 それでも、「このままでは被害者の私が加害者となってしまう」との懇願に同情したのか、警察官は電話を切る間際、「事故報告書は、すでに地域警察署に提出してある。B女さんが甲欄だ」と告げた。

 当初、その一言の意味をAさんは理解できなかった。おそらく一言は、警察の民事不介入原則をすでに違反しているのだろう。その後、何度かAさんは担当警察官とのコンタクトを試みたが、常に同僚が対応し、本人とは二度と話すことができなかった。
 とはいえ、事故に関し報告書があることは朗報である。早速、Aさんは地域警察署に行き開示を求めるが、門前払いとなる。物損事故(物件事故)は、自動車運転過失致死障害罪違反(刑法211.2等)での立件がないため、原則として「刑事記録(実況見分調書)」のようなものが無い。物件事故の場合は、「物件事故報告書」を作成するが、基本的に警察の 内部資料の扱いとなり、公開はしていない、という説明であった。

 

それから数ヶ月

  そうこうしている間、すでに数ヶ月が経過したところでA車保険会社から連絡がある。Aさん保険会社はすでに対応できないと撤退しているので連絡は意外だ。
 「B女さん保険会社から、料率を50:50に引き下げるとの提案があった。これで決着してはどうか」というのが、話の内容である。70:30であろうが、50:50であろうが、Aさんの忸怩に変わりは無い。返答に躊躇していると、損保担当者は「裁判を考えているのですか」と質す。「裁判をしても、証拠は何もありませんよ。B女さんは中央線がある優先道路を走行していたのですから、状況はAさんが不利です」と言う。

 

 勿論、裁判など考えたことはない。しかし雰囲気から損保会社は「裁判」を懸念していることは想像できる。そのまま黙っていると「Aさんは、弁護士特約に加入されていますので、弁護士費用として300万円まで保険でカバーできます。特約を利用されても保険等級に変化はありません」。
 おそらく担当者は、保険内容の説明義務として弁護士特約の説明をしたのだろう。しかしこの話はAさんを啓発した。

 

 「特約を使う場合、弁護士事務所を紹介してもらえるのですか」
 「ご紹介している弁護士はいません。ご本人様で探していただく必要があります。弁護士事務所をお決めいただき、請求書を弊社に送って頂くことになります」
 短い電話であったが、膠着していた事態がこれで、再び動く。

 

弁護士事務所

 「代理人(弁護士)に事の解決を委ねる」を決意したAさんは、当初、勤務先の顧問弁護士に依頼した。事情を一通り聞いた顧問弁護士は、「了解しました」と代理人となることを快諾、Aさんも安堵する。ところがその後、一ヶ月、二ヶ月、弁護士から何の連絡もない。業を煮やしAさんが顧問弁護士に連絡すると「忙しくて時間がとれない」と陳謝する。
 これも後日判明したのであるが、医者に内科や外科があるように弁護士にも専門分野がある。ましてや高々数十万円程度の物損では解決しても弁護士報酬はたかが知れている。専門外の顧問弁護士の腰が引けるのも無理は無い。弁護士であれば誰でもいい、ということではないのだ。

 

 Aさんは丁重に依頼解除を申し出て、交通事故専門の弁護士をネットで探し、電話で代理人を依頼したところ、「B女さんの保険会社は、○○損保ですか?」と質す。「いえ、△△損保です」と答えると、「それならば対応できます」との返事だ。
 聞けば、この弁護士は○○損保の契約弁護士であり、紛争相手が○○損保の場合は「引き受けない」とのこと。実に厄介な業界である。

 

 しかし交通事故専門弁護士に依頼し今度は、急速に事態が進む。依頼から数日後、新弁護士から次のような話がある。
 「B女さん損保担当者と話しました。Aさん、衝突で破損した箇所は、もう自費で修理してしまったでしょうか」
 「いいえ、破損したウィンカーの電球だけは交換しましたが、それ以外はガムテープで補修する不様な姿のまま乗り続けています」
 「それはよかった。B女さん損保が一度、アジャスターに破損状況を検証させたいといっていますので、アジャスターの検証が終わるまで、修理しないでください」
 「アジャスター?」
 「損害車輌の事故原因を調査し、被害額を査定する技術者で、事故調査員の資格を持つ人のことです。検証日時を決めるため、損保担当者が直接Aさんに連絡したいといっていますが、構いませんか」

 

 一度代理人(弁護士)を立てると、交渉窓口は代理人に一本化される。B女車損保担当者もAさんに直接連絡する場合は、代理人を経由してAさんの了承を得る必要がある。そんな「仕組みになっている」、ということもこの時初めて知った。無論拒否するような筋合いでもない。

 

 ほどなく、損保担当者から連絡があり、アジャスターにはAさんが指定した日時、場所に来てもらうことにした。
 並行してAさんは弁護士に地域警察署に管理されている物件事故報告書の開示を求めていた。第三者の証人もドライブレコーダーのような物証も無い状況では、事故状況を立証するのは唯一、この報告書だけではないか、とAさんは考えていたのだ。
 「弁護士の資格をもって当該報告書の開示請求を警察署に行なった」弁護士からの一報にAさんの期待は高まるが、二週間ほど後、「正式に拒絶された」との回答に再び落胆する。またもや暗雲が漂うが、想定外のところから光明がさす。アジャスターの検証だ。

 

アジャスター検証

 指定した場所に時間通りにやってきたアジャスターは、自己紹介し、名刺をAさんに差し出した。B女車損保会社の社員である。そして事故車に歩み寄り、損傷箇所を見た途端「イヤー、チャンと残ってますね」と言う。Aさんには何のことだか理解できない。
 その後、アジャスターはメジャーで長さを測ったり、写真を撮ったり、特定箇所を虫眼鏡で眺めたりで、15分ほど作業を続けた。
 一通りの検証を終えたアジャスターは、Aさんの胸を衝く驚くべき一言を放つ。

 

 「エンジニアの良心として話しますが、この事故の被害者はAさんです」

 

 「なんでソンなことが分るのか」、Aさんは混乱する。状況が理解できず唖然としているAさんにアジャスターが「なぜか」を説明する。

 

 「バンパーに残るこの四角いヘコミを見てください」
 確かに指示された箇所にウッスラと長方形のヘコミがある。

 「これは業界ではプレート痕(ナンバープレート痕)と呼ばれるもので、相手車のナンバープレートがココに衝突し、スタンプしたかのように残った刻印です。プレート痕はぶつけられた車に残る、という特性があります」
 言葉を失うAさんにアジャスターは続ける。

 

 「場合によっては、相手車のナンバーが判別できるほど刻印が残るものがあり、そのようなケースでは100%停車していた車輌にぶつかったと断言できます。A車の場合はソコまでではありませんが、明確にプレート痕が残っていることと、相手車のプレートペンキが一部A車に付着しているところから、A車は停車していたか、超微速で前進している最中に数倍のスピードで相手車が衝突した事故であると判断できます。
 もう一つ、航空写真(Google Map)から現場の四つ角は河川上にあり、道路側面に欄干があるため、車は路外にはみ出すことができず、衝突の箇所は幾何学的な制約を受けます。A車前方右辺がこの角度で凹んでいることは、Aさんが主張する一時停止線上での停止を裏付けるものです。逆にA車が突進してきて交差点上で衝突したとするB女さんの主張では、この凹み方を説明できません」
 プロの仕事とはこういうものか、Aさんは圧倒される。

 

 「ただし、」とアジャスターは続ける。「私はB女さんのアジャスターですので、その立場で報告書を書きます。こういうことは言ってはいけないのですが、Aさんの側でもアジャスターを手配し、Aさんの主張を立証する調査報告書を準備されるべきです」

 

 このアジャスターが来てくれたことは、なんと幸運なことか。早速Aさんは、弁護士を通じ、Aさん側のアジャスターを手配、再び事故車検証を実施、「全ての状況からA車が停車中の事故であることは、疑いようがない」と結論する報告書をB女車損保に送った。

 

 そうこうしている内に思いもよらない吉報が飛び込む。弁護士より諦めていた地域警察署の「物件事故報告書が開示されることになった」との連絡があったのだ。弁護士個人の資格では開示拒絶となったので、弁護士会会長名で再要請し、開示に至ったという。
 数日して弁護士より開示された報告書が郵送されてきた。高鳴る鼓動を抑えながら、開封すると中身は意外なものであった。A4用紙に事故日時、場所、当事者の氏名や住所などの基本情報に、「A車停車中にB女車がぶつかった」と一言事故内容欄に書き入れられた誠に簡素なものであった。状況の詳細や現場聴取の記録、写真など一切無く、単に一言あるだけである。

 

 面を食らったAさんであるが、後日、物件事故報告書は警察官の多忙さの度合いや性分などにより内容の密度に相当なバラツキがあることを知る。小破したA車事故などは警察が優先すべき順序としては相当低いに違いない。事によると警察が、物件事故報告書を原則非公開とするのはコレが理由かなどと邪推したくもなる。

 とはいえ、一言は事故の責任がB女車であることを明確にしている。これは警察が認定した事実であるからして、もし相手方が事実と違うと争うのであれば、警察の事実認定を覆す証拠が必要となる。ここに至りようやくAさんは、「証拠があるのか」とB女さんを質す立場へと逆転した。事件発生から一年が近づきつつあった。

 

意外な結末

 翌日、弁護士から早急に会いたいとの連絡があり、一件落着も近いと小躍りして事務所を訪れたAさんは意外な話を聞く。

 

 「コチラのアジャスター報告書を送り、交渉した結果、B女さん損保から料率を30:70とし、自分の責任のほうが大きいことを認める、といってきました。本件に関しては、ここら辺りが収めどころと考えます。仮に裁判に持ち込んでも勝てる見込みはなく、通常裁判では相手側は100:0と責任が一切ないと主張するのが通例で、そうなると相手方の責任7割すら勝ち取れなくなるリスクがあります」

 

 いきなり切り出した弁護士の話にAさんはたじろぐ。物件事故報告書を入手し圧倒的有利となったはずであるが、3割の過失を認め和解するようにと語気強く勧める。
 弁護士依頼からすでに半年を経過している。おそらく弁護士としてもAさんのような少額紛争にこれ以上時間を割かれたくはないのだろう。ましてや裁判ともなれば、小さな事案で更に稼働を奪われる。
 「これ以上は係わりたくない」を察したAさんも「もはやコレまでか」を決心する。

 

 「物件事故報告書はB女車損保に送ったのでしょうか」
 「まだです」
 「では、30:70で妥協するしないは、先生の判断にご一任いたします。ですが、物件事故報告書を提示し、一応10:90、20:80と少しでも相手の責任を積み上げる交渉をなさってください。それでも30:70を譲らない、というのであれば、その場で30:70で和解していただいて構いません」
 「了解しました」

 

 Aさんは若干の脱力感を感じながら弁護士事務所を出る。社会とはそういうものか、などと考える。ともあれ、コレで一年余続いた苦悩からは開放される。奥底に淀むものはあるが、安堵は安堵だ。

 

 数日後、弁護士から連絡がある。妥結した料率を尋ねると、「0:100となりました。B女さんは全面的に責任を認めました」。急変する事態にAさんも混乱する。

 

 「物件事故報告書を提示すると即座に0:100を認めました」

 

 B女車損保からはここ最近頻繁に弁護士事務所に和解確認の連絡が来ていたとのこと。どうも少額案件で一年も長引くことは異例で、Aさんが裁判に持ち込む準備をしていると警戒したようである。そのタイミングで提出された物件事故報告書、「このままでは裁判になる」の一言でB女さんも「折れた」模様とのこと。

 

 「A車補償修理の件で、B女車損保の担当者が、Aさんと直接話たいと言っていますが、構いませんか」
 例によって直接コンタクトの許可だ。無論やぶさかではない。

 

 

 ほどなくして、担当者から電話がある。
 「この度は、ご迷惑をおかけいたしまして申し訳ございませんでした」
 この担当者とも一年の付き合いである。これまでの加害者扱いの態度が豹変したことに腹がむずがゆくなる。しかしこの時、Aさんは心底「終わった」を実感したのであった。

 

 ○B女さん損保が負担したA車修理費用 約40万円

 ○Aさん損保が負担した弁護士費用 約70万円

 

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 人身事故よりも物件事故(物損事故)の方がはるかに多い。警察の民事不介入となる物件事故では、保険会社の力関係や弁護士の度量、あるいは当事者の声の大きさ、時の運不運で真実が歪む。泣き寝入りするしかない被害者は想像以上に多いようだ。
 この一件一番の教訓は、「ドライブレコーダーを装着せよ」である。無い場合は、少なくとも車を移動させる前に現場の写真を撮っておかねばならない。
 第二は「任意保険の弁護士特約に加入せよ」だ。そもそも弁護士特約はAさんのような事態への備えなのである。特約費用も大した金額ではない。いざという時に備える不可欠な特約といえる。
 Aさんのように良心的なアジャスターと出会えるかは、時の運に属するであろうが、特約加入であれば、弁護士事務所を通じて、コチラ側のアジャスターを依頼することもできる。そのためにも交通事故専門の弁護士に依頼するべきだ。

 

  保険会社のアンケート調査によれば、過去1年で何某かの事故に遭遇したドライバーの比率は10%、つまり10人に一人は事故に会う勘定となる。人身事故でなければそれだけでも幸運といえるが、被害者でありながら、加害責任を負う理不尽もジャンケンで二連勝する程度の確率で起り得る「事故」に含まれるのだ。

 

【時事デスク】