時事旬報社

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令和天皇の即位と女性・女系天皇問題

 

 

 今月より令和がはじまった。先代である平成天皇の第一皇男子が即位したので男系男子が承襲する皇室典範は維持され、万世一系を唄う皇室伝統も守られた。一方、男子の皇位継承資格者が不足し、将来の天皇制存続を危ぶむ危機感から、「女性・女系天皇を認めるべき」との議論も加速している。

 

 神武天皇を太祖とする日本の天皇制は今上天皇をもって126代となる。「実存した天皇は何代からか」は、専門家の間で議論が分かれるが、仮に存在が間違いない第26代継体天皇を起点としても1500年に渡り連綿と続いた世界無比の単一王朝であることは間違いない。これは奇跡といえる。無論、長きにわたって継続することができたのは、この国の多くの人心が天皇を慕い、無くすべきではないと考え続けたからに他ならない。皇室にたいする敬愛は現在でも続く。奇跡は国家開闢から今に至るまで、日本人の心に天皇が存在しつづけなければ生まれるものではない。

 

 その皇室の血統が途絶える可能性がある。女性・女系天皇議論が起こるのも当然である。有事の対策を怠るべきではない。しかし、その議論の「一部」には少々「危険」を感ずる。「一部」とは、「男女平等が当然である現代に皇室の性差別はおかしい」という主張である。

 

 女性天皇女系天皇は異なる。女性天皇とは、単に性別が女性である天皇のことであるが、女系天皇は父型の先祖が最終的に神武天皇に到達する血筋でなければならない。つまり女系天皇の場合は、血統が問題となるのである。過去に女系天皇は8人(10代)存在した。しかし女性天皇の前例はない。

 

 女系天皇は18世紀の後桜町天皇を最期に事例がなく、8人の内6人(8代)は平安時代に集中することを勘案したのか、現在の皇室典範は、皇位継承を男系男子に限定した。この皇位継承の定めから、「女性の天皇論議吹き出したのである。

 

 もし「女性天皇は否定するが、女系天皇を受容する」ことになれば、今上天皇の第一皇女子(愛子内親王)は、次代の皇位継承順位一位となるが、その場合でも即位後、一般男性と婚姻するとなると、愛子内親王の実子は(父方血統の問題で)皇位継承権がなく、神武天皇に繋がる誰かを次次代天皇として見つけなければならない、という関係となる。

 

 それではいっその事、「女性天皇も認めてしまえばいい」となれば、間違いなく世継ぎ問題は解決する。しかしそれは、血統は関係なく「誰でも天皇になることを認める」ことに他ならない。

 

 民主主義の理念からして、皇室の男女差別は「間違っている」と主張はできよう。しかしそうであれば、「選挙によらず天皇が決まる」こともオカシイに繋がる。選挙で天皇を決めるのであれば、もはや天皇制はなくなったに等しい。日本人の心に続いた天皇とは、そんな天皇ではない。

 

 「今日の常識」との理念に惑わされがちとなるが、事、天皇制については、現代人であるわれわれとしても、過去数千年に渡って先祖が温め守ってきた伝統を子孫に受け継ぐ義務がある。

 天皇制に関しては、現代社会の課題、つまり私達の問題なのではなく、1000年、2000年後の日本という視座を等閑にして考えてはならない問題なのである。「選挙で天皇を決めるなどナンセンス、、、」と誰もが思うだろう。しかし「1000年後の日本人もソウ思うに違いない」などと断言できるものもいまい。

 

 だとすれば、変質、解体を回避するために、「今までやってきた通りに今後もやる」が最善である。伝統に論理的な解釈を求めるべきではない。仮に非効率であったとしても、「昔のまま」現在に繋がるから「伝統」なのである。

 「男系」を守り抜いたから1500年天皇制は存続できた、ともいえる。日本史に名を残すいかなる英傑、武将、権力者であっても「天皇」にはなれなかった。例外なく、男系血筋のみが資格者であったからだ。この原則を撤廃していれば、とうの昔に天皇制は消滅していたに違いない。

 

 一見、非合理と感ずる男系男子に関しても、故はある。

 

時事短観(1)