電撃訪中:中朝首脳会談
日本は蚊帳の外か
3月26日、極秘裏に金正恩委員長が訪中、習近平国家主席と首脳会談を実施した。張成沢の処刑以来、中朝関係は冷え切っていたとされてきただけに正に意表をつく訪中である。28日午前、朝鮮中央放送は「習近平主席の招きにより26日から28日まで中国を非公式に訪問した」とし、中国の招きであったと報ずるが、中朝どちらが積極的に仕掛けたのかは明らかではない。
中朝にとっていは、南北・米朝会談を控えるこのタイミングで会っておく意義は大きい。会うだけで米国、韓国への強力なプレッシャーになる。この筋書きを金正恩が書いたのだとすれば、彼は想像以上の才物であるといえる。この指導者と対峙するのは一筋縄ではゆかないことを察する必要がある。
もう一つ、今回の訪中でハッキリしたのが金正恩という人物の外交的存在感である。独裁者の後継者として帝王学を仕込まれた金正恩であったが、終始箱入り生活の世間知らず、内向的(内弁慶)で、外交のように「自分にひれ伏さない」相手との対等交渉は苦手、安全な大奥から鵜飼い政治を行なうのみで、習近平やトランプなど百戦錬磨の巨漢に面と向かう度胸はないなどとの憶測もあった。しかし今回で、ソンな小粒ではないことも分った。
張成沢処刑は、彼が中国に金正恩排除を仕掛けていた謀略の発覚であったことより、習近平がその気になれば、ノコノコと訪中してきた問題児を拘束し排除するとのリスクを金正恩が警戒しないはずはない。そのリスクを冒してでも、今後の対米、対韓、対中交渉の主導権確保に奔走したことは、月並みではない外交手腕と見るべきであろう。
さて日本である。北朝鮮問題の急展開に関し、日本は目立った関与がない。このままでは蚊帳の外となる不安感が漂う。しかし関与がないのは接点がないとのことで、接点がないのであれば、無理に接点を作る必要も無いと思える。無論、日本には拉致問題という急迫した難題があり、事態を傍観するような余裕は無いが、急いて足下を見られるような事態も回避せねばならないだろう。
今後、米朝会談が実現するか、実現し半島問題が平和的解決に向かうのかは誰にも分らない。日本が「動く」のであれば、どの方向に向かったとしても対応できる方策を周到に用意しておかねばならない。
例え誰がプレイヤーとなって情勢を動かしたとしても、結果として半島の緊張が解消され、平和国家北朝鮮が国民経済本意の政策にシフトしてゆくのであれば、喜ばしい進展であることに変わりは無い。誰の手柄かはともかく、好転すれば、拉致問題解決の好機も自然と訪れるに違いない。
しかし、並ではない才物が相手であるからして、日本唯一のカードともいえるピョンヤン宣言(巨額戦後補償金拠出)をトランプ流ディールとして最大限に活用する、つまり、匂いだけ嗅がせるとか最低分だけの小出しを繰り返すなど、若い老獪にコチラも権謀術策の限りを尽くし、目的を達成する程度の悪知恵は求められる。
【国際部半島情勢デスク】