時事旬報社

時事問題を合理的な角度から追って行きます

韓国の「死に至る病」(2)

武漢 新型コロナウィスルへの国際支援


 中国外務省の華春瑩副報道局長といえば、日本でもおなじみです。日中の政治問題については、スポークス(ウー)マンとして岩盤のように中国の立場を譲らず、取り付く島もない傑女とのイメージです。


 ところが、武漢から始まった新型コロナウィルスに対する日本の支援・厚情につき、副局長から少々過分ともいえる謝意が表されました。(中国)湖北テレビの質問に彼女は次のように応じています。

 

 「新型肺炎の発生以降、日本では政府をはじめ、社会各界が中国への同情、理解、支援を表明しています。新型肺炎の流行を受けた日本政府は、中国を全力で支持すると表明しました。日本の政府、地方自治体、企業の多くが、マスク、ゴーグル、防護服などを自主的に寄贈しています。
 武漢に届いた物資の箱には、山川異地 風月同天(離れていても繋がっている)や豈曰無衣、与子同裳(不足があれば補い合おう)などの励ましの言葉がありました。私がネットで見た写真には、日本のドラッグストアが"頑張れ武漢"、"頑張れ中国"と掲示している様子がありました。東京スカイツリーは、赤と青にライトアップすることで、武漢新型肺炎に打ち勝つように祈願し、エールを送りました。
 また、一部の国における極端な差別的発言に対しては、日本の厚生労働省の高官が記者会見の中で、"人が悪いわけではなく、ウィルスが悪い"と強調し、日本の一部学校は、保護者に手紙を送り、武漢を差別的に論じないで欲しいと伝えています。
 私と同様に、中国の多くの人々が、日本の人々の暖かい言葉や行動を見ているはずです。感染症との戦いという困難な時期における、他国の人々からの同情、理解、支持に心から感謝し、これを心に刻みたいです。
 ウィルスには感情はありませんが、人には感情があります。感染症の流行は、一時的なものですが、友情は永遠に続くものです。」

 

 この謝意は、今月4日の定例記者会見で表明されましたが、華副局長は更に16日、彼女の個人ツイッターに異例にも日本語で、日本の支援への感謝を伝える念の入れようですから、どうも私たちの方が恐縮してしまいそうです。

 

 ところが、この中国の態度が気に入らず、噛みついた国がありました。隣国韓国です。

 

 反感の骨子を平たく言えば、「日本よりも韓国の方が、中国に支援しているのに、一方的に日本ばかりを持ち上げるのはけしからん」というものです。韓国のマスコミも、この論調に準じ、韓国社会の一般的な「見方」となりつつあります。
 以下は、嫌悪感を極力希釈した、つまり憤慨を自虐的に和らげた中央日報の記事(一部抜粋)です。

 

 

 「韓国の寄付が明らかに多いのに、なぜ日本だけを記憶するのか」--。韓国語と韓国文化に造形の深い中国ネットユーザーが11日、中国SNSの微博にこのような題名のコメントを載せた。新型コロナウイルス感染症の感染拡散事態を受け、韓国と日本は中国に多くの援助をしている。ところが多くの中国人は日本との友情だけを記憶し、韓国の援助は無視しているというのがこの投稿の中心内容だ。
 「感染症は一時的なものだが、友情は末永いものだ」。中国外交部の華春瑩報道官が今月4日、オンライン定例記者会見で述べた言葉だ。華氏は「中国は日本人の温かく良心的な振る舞いに注目している」とし「日本政府と社会各界の理解と支持に感謝する。心に深く刻みたい」と話した。
 各国の支持と同情に言及したりしたが、日本だけを特別に取り上げて感謝の表現を残した。華氏は翌日、防疫物資を支援した21カ国を挙げて韓国にも謝意を表した。だが、日本だけに対する「特別な感謝」とは大きな温度差があった。
 成均館(ソンギュングァン)大学中国研究所によると、5日基準で韓国企業約20社が中国に届けた寄付と救援物資は約8926万人民元(約14億400万円)ほどだ。日本の支援額(4652万人民元)に比べて2倍近く多い。
 韓国は事態の早い段階から繰り返し政府や民間から寄付物品を届けた。日本は韓国よりも小さな規模の援助をしたが、代わりに別のものを追加した。それが「感動と応援」のメッセージだった。
 日本は韓国に劣らず観光産業で普段中国人観光客の比重が大きい。免税店や飲食店など、中国人観光客が多く訪れる日本の店ではマスク着用など新型コロナの感染に注意するよう呼びかける張り紙をしながらも、ここに「中国頑張れ(中国加油)」「武漢頑張れ」というメッセージも添えている。大阪の通りには「ファイト武漢!(挺住武漢!)」という垂れ幕を商店会次元で掲げたりもした。
 韓国にしても日本にしても、両国の援助はどちらも感謝すべきことだ。ただ、韓国は(日本と比べて)ディテールで大きく及ばない。

(韓国が「モノ」だけ送っていたとき「情」を送った…中国を感動させた「隣国日本」:中央日報/中央日報日本語版 2020.02.14 09:08)
https://s.japanese.joins.com/JArticle/262575?sectcode=A30&servcode=A00


 手前味噌の強調を回避するためか、論旨に中国人ネットユーザーの言を拝借していますが、要するに日本の倍も支援している韓国が、中国から日本ほど評価を得ないのは、情の「演出」が拙かったためだ、という主張です。

 

 中央日報ともあろう、韓国の巨大マスコミが何ら憚ることなく、このような記事を公にするとは驚きです。中央日報は、この記事が日本や中国社会に、どのように映るかを考えなかったのでしょうか。

 とどのつまり、韓国の「支援」は、「評価」という「対価が目的であった」となってしまうではありませんか。その対価とは、明白に以下の二つです(少々、意地悪く書きます)。

 

  1.  俺たちの方が、日本より二倍も支援しているのだから、その事実を中国は心に刻め。
  2. その物量に見合うよう中国人は韓国に感謝しろ。

 

  対価を求めるような支援は物理的な形はあったとしても、真心とか友情とは縁遠い存在で、本当の意味での支援ではないでしょう。そもそも何故、日本と比較する必要があるのでしょうか。ハラペコの浮浪児に隣家があんパン一つを恵んだから、コッチは二つだ、と成金が自己満足するに似た滑稽なことです。

 

 勿論、中央日報の記者は、「ソンな意味で書いた記事ではない」と反論するでしょう。しかし、この記事が日本や中国にどう「映るか」ということが問題です。日本の読者からは「ひがみ」と映るのは避けようもありません。当然のことながら、日本が中国へ「支援」する際に韓国を意識することはありません。


 「日本の二倍の支援」ですが、オチもあります。1月30日、新型肺炎で大混乱する武漢に韓国政府はいち早く、「マスク300万枚を支援する」と表明しました。ところが、この政府発表を端緒に韓国内マスクが品不足となり価格が急騰(価格が12倍に高騰)、世論は中国への「マスク朝貢」だと沸騰しました。


 すると韓国政府は前言を撤回し、「マスクは全て中国留学校友総連合会と武漢大韓国総同門会が自発的に準備したものだ」と釈明、つまりは「マスクを調達したのは中国の団体であって、政府は買い集めてはいない、中国への輸送を支援しただけだ」と弁明したのでした。

 

 事ここに至っては、何をか言わん、です。

 

(ソウル通信)